その不調、気象病かもしれません 秋の低気圧と更年期が重なるとき

ヘルスケア

こんにちは!ギネのあっちゃんです!

秋雨前線に台風と、すっきりしない天気が続いていますね。この時期の外来では「頭が重い」「めまいがする」「なんとなくだるい」「気分が落ち込む」といったご相談がぐっと増えます。しかも更年期の年代の方は、もともとの症状とぴったり重なるので、ご本人も「どっちのせいなのか分からない」とおっしゃることがとても多いのです。

今日は、秋に体調を崩しやすい理由と、原因に合わせて選べる治療についてお話しします。

なぜ秋は体調を崩しやすいのでしょう

気圧の変化が自律神経を不安定にします

耳の奥(内耳)には、気圧の変化を感じ取るセンサーがあります。低気圧が近づいて気圧が下がると、このセンサーが変化を感じ取り、その情報が自律神経に伝わります。

秋は台風と秋雨前線で低気圧がくり返し通過するため、気圧の上がり下がりが一年でもとくに激しい季節です。そのたびに自律神経が反応を強いられ、頭痛、めまい、倦怠感、肩こり、気分の落ち込みといった症状が出やすくなります。これがいわゆる「気象病」です。

寒暖差に体がついていけません

秋は日中と朝晩の気温差が大きく、日によっても10度近く変わることがあります。体温を一定に保つのは自律神経の仕事ですから、その振れ幅が大きいほど消耗します。夏の疲れが残っているところに、この負担が重なります。

日照時間が短くなります

日が短くなると、気分を安定させるセロトニンという物質が作られにくくなります。気分の落ち込み、意欲の低下、眠りの質の低下につながり、「秋になると毎年つらい」という方はここが関係していることがあります。

そこに更年期が重なると

女性ホルモン(エストロゲン)は、自律神経をコントロールしている脳の視床下部という場所に働きかけています。更年期にエストロゲンが減ると、体温調節や血管の収縮・拡張がうまくいかなくなり、自律神経がもともと不安定な状態になります。

そこへ気圧の変化と寒暖差が加わるわけですから、つらくないはずがありません。

やっかいなのは、症状がそっくりだということです。

  • 頭痛・頭重感
  • めまい・ふらつき
  • 倦怠感・疲れがとれない
  • 肩こり
  • 気分の落ち込み、イライラ
  • 眠りが浅い

これらは気象病でも更年期症状でも起こります。ですから「気圧のせいだから仕方ない」とも「更年期だから我慢するしかない」とも決めつけないでいただきたいのです。どちらが主な原因かで、選ぶ治療が変わってきます。

似た症状の、別の病気が隠れていることもあります

この年代で見逃したくないものがあります。診察では、まずこうした病気がないかを確認します。

  • 貧血:月経量が多い方では珍しくありません。だるさ、動悸、息切れ、頭痛
  • 甲状腺の病気:疲れやすさ、むくみ、気分の変動。更年期と間違われやすい代表格です
  • めまいの病気:メニエール病、良性発作性頭位めまい症など。ぐるぐる回る、横になると回る場合は要注意
  • うつ病:気分の落ち込みが強く、何をしても楽しめない状態が続くとき
  • 高血圧:更年期以降に上がってくる方が多くいらっしゃいます
  • 睡眠時無呼吸:日中の強い眠気、いびきを指摘される方

「更年期でしょう」で片づけてしまうと、これらを見逃すことになります。採血や血圧測定など、簡単な検査で確認できるものばかりです。

原因に合わせて、選べる治療があります

ここが一番お伝えしたいところです。がまんする必要はありません。いくつも選択肢があり、体質や症状、持病によって使い分けができます。

漢方薬

気象病と更年期症状、その両方に対応しやすいのが漢方薬です。漢方では、気圧や湿度の影響で体に余分な水分がたまった状態を「水滞(すいたい)」と考え、これを整えるお薬があります。

  • 五苓散(ごれいさん):低気圧のときの頭痛、むくみ、めまいに。雨の前に飲むという使い方もできます
  • 苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう):立ちくらみ、ふわふわするめまい、動悸に
  • 半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう):胃腸が弱く冷えやすい方の頭痛・めまいに
  • 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):冷え、貧血傾向、むくみのある方に
  • 加味逍遙散(かみしょうようさん):イライラ、不安、症状が日替わりで変わる方に
  • 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん):のぼせ、肩こり、血の巡りの滞りに

同じ「頭痛」でも、体質によって選ぶお薬が変わります。また漢方薬は保険が使えるものが多く、HRTが使えない方の選択肢にもなります。

ホルモン補充療法(HRT)

減ってしまったエストロゲンを少量補う治療です。ほてり、発汗、不眠に対しては最も確実な効果が期待できる治療で、自律神経の不安定さそのものを底上げしてくれます。骨粗しょう症の予防にもなります。

飲み薬、貼り薬、塗り薬があり、生活に合わせて選べます。乳がんや血栓症の既往がある方などは使えませんので、問診と検査で適応を確認したうえで開始します。閉経後10年以内、60歳未満で行うのが望ましいとされていますので、迷っている方は早めにご相談ください。

エクオール(エクエルなど)

大豆イソフラボンが腸内細菌によって変化してできる成分が「エクオール」です。エストロゲンに似た働きをします。

ただし、エクオールを作れる腸内細菌を持っている日本人は半分ほどといわれています。大豆製品をよく食べているのに効果を感じない方は、作れていない可能性があります。作れない方でも、エクオールそのものをサプリメントで摂ることができます。

ほてりや肩こりなどの改善が報告されており、HRTに抵抗がある方、まず手軽に始めてみたい方に向いています。薬局でも購入できますが、他の治療と組み合わせる場合は一度ご相談ください。

プラセンタ療法

ヒトの胎盤から作られた注射薬(メルスモン)で、更年期障害に対しては保険が使えます。週1〜3回の皮下注射から始めることが多く、だるさや疲労感が気になる方に選ばれています。効果の感じ方には個人差がありますので、一定期間試してみて判断するのがよいと思います。

ここで最新のお知らせがあります。プラセンタ注射を受けた方は、これまで期間を定めず献血をご遠慮いただくことになっていました。これが2026年10月1日から変わります。新しい基準では、最終の使用日から3か月が経過すれば、献血ができるようになります。献血のことが気がかりで治療をためらっていた、という方もいらっしゃったかと思いますので、あわせてお知らせしておきます。

なお同じ日から、英国を含む欧州などの滞在歴にもとづく献血制限も撤廃されます。

出典:日本赤十字社「英国を含む欧州などの滞在歴に基づく献血制限の撤廃およびヒト胎盤エキス(プラセンタ)注射剤使用歴に関する献血基準を変更します」2026年9月14日発表

日常でできること

  • 気圧の変化を先回りする:気圧予報のアプリで低気圧の接近が分かります。つらくなる日が予測できれば、予定を調整したり、早めに漢方薬を飲んだりできます
  • 朝、光を浴びる:起きて30分以内にカーテンを開けて光を浴びると、セロトニンが作られ、夜の眠りも整います
  • 耳をあたためる:内耳の血流をよくするため、耳を軽くつまんで回す、蒸しタオルをあてるのも助けになります
  • 湯船につかる:シャワーだけで済ませず、ぬるめのお湯にゆっくり。自律神経が切り替わりやすくなります
  • たんぱく質と鉄をしっかり:食欲が落ちる時期ですが、ここが不足すると疲れやすさが増します
  • 寝る時間を一定に:休日の寝だめは、かえってリズムを崩します

こんなときは早めに受診を

  • 今までに経験したことのない激しい頭痛
  • ろれつが回らない、手足に力が入らない、物が二重に見える
  • ぐるぐる回るめまいがくり返す、耳鳴りや聞こえにくさを伴う
  • 気分の落ち込みが2週間以上続き、何をしても楽しめない
  • 市販薬でしのいでいるが、よくならない
  • 日常生活や仕事に支障が出ている

まとめ

  • 秋は気圧の変動、寒暖差、日照時間の減少が重なり、自律神経が消耗しやすい
  • 更年期はもともと自律神経が不安定なため、症状が強く出やすい
  • 貧血、甲状腺の病気、めまいの病気などが隠れていることもある
  • 漢方薬、HRT、エクオール、プラセンタと、選べる治療がある
  • 体質や持病に合わせて使い分けができるので、まずは相談を

「この程度で受診していいのかな」とためらっているうちに、季節はどんどん進んでしまいます。つらい時期を毎年やり過ごすのではなく、一度ご相談くださいね。楽になる方法は、きっと見つかります💕

※本記事は医療情報の提供を目的としており、診断・治療を目的としたものではありません。症状が気になる方は必ず医療機関を受診してください。

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この記事を書いた医師
戸澤晃子(産婦人科医)

産婦人科専門医・聖マリアンナ医科大学客員教授。

【専門分野】
・婦人科検診(子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん)
・更年期障害・ホルモン補充療法(HRT)
・子宮内膜症・子宮筋腫
・骨粗鬆症・GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)
・プレコンセプションケア

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