「もしかしてヘルペス?」と不安に思ったことはありませんか?性器ヘルペスは、意外と身近な感染症です。恥ずかしくて病院に行きづらいと感じる方も多いのですが、早めに受診して適切な治療を受けることがとても大切です。
今回は、産婦人科医の立場から、性器ヘルペスについて正確でわかりやすい情報をお伝えします。
春先で体力が落ちているせいか、最近ヘルペスの患者さんが増えています。ぜひご覧ください。
性器ヘルペスとは?
性器ヘルペスウイルス感染症(genital herpes simplex virus infection)は、単純ヘルペスウイルス(HSV:Herpes Simplex Virus)が原因の感染症です。主に性行為などの性的接触で感染し、性器やその周辺に痛みを伴う水疱・潰瘍ができることがあります。
一度感染するとウイルスが体内に潜伏し、免疫が低下したときに繰り返し再発するのが特徴です。
日本では感染症法により、五類感染症(定点把握対象疾患)に指定されており、20代〜30代の若い世代に報告が多い感染症です。
原因ウイルス:HSV-1とHSV-2の違い
原因ウイルスには2つの型があります。
| 種類 | 主な感染部位 | 感染経路 |
|---|---|---|
| HSV-1型 | 口・口唇・上半身 | 唾液・口唇接触(幼少期の感染も多い) |
| HSV-2型 | 性器・肛門・下半身 | 主に性行為 |
ただし、この区分は厳密ではなく、口唇性交(オーラルセックス)などによって、HSV-1が性器に感染するケースも増えています。
主な症状(男女別)
初発(初めて感染したとき)
初感染による初発が最も症状が重いとされています。感染の機会から2〜21日(通常3〜7日)の潜伏期間ののち、以下の症状が現れます。
女性の症状
- 大陰唇・小陰唇から膣前庭部・会陰部にかけて、痛みやかゆみのある水疱・潰瘍が出現する
- 足の付け根(鼠径部)のリンパ節の腫れや痛み
- 排尿時の痛みや排尿障害
- 初感染時には発熱を伴うこともある
男性の症状
- 性器・肛門に痛みやかゆみのある1〜2mmほどの水疱・潰瘍が生じる
- 足の付け根のリンパ節の腫れや痛み
- 尿道からの分泌物が出ることがある
- 初感染時には発熱を伴うこともある
初発を無治療で放置した場合、治癒まで2〜4週間かかることがあります。女性では排尿困難・歩行困難になるほど重症化する場合もあります。
感染経路
性器ヘルペスは、主に以下の経路で感染します。
- 性行為(膣性交、口腔性交、肛門性交を含む)
- 無症状でも感染源になる:症状がなくても、性器の粘膜や分泌液中にウイルスが存在していれば感染します
- 母子感染:妊婦が性器ヘルペスに感染していて、出産時にウイルスを排出していた場合、新生児がHSVに感染することがあります(新生児ヘルペス)
⚠️ 注意:感染しても無症状の場合があり、自分が感染していることに気づかないまま他の人にうつしてしまうことがあります。
検査・診断方法
婦人科・泌尿器科・性病科などで以下の検査が行われます。
- ウイルス検査:水疱・潰瘍部分をこすって採取し、ウイルスの分離・同定や遺伝子検出(PCR法)を行う
- ウイルス抗原検出:病変部からのウイルス抗原を確認する
「もしかして…」と思ったら、症状が出ているうちに早めに受診することが検査の精度を高めます。
治療方法
性器ヘルペスの治療には抗ウイルス薬が使われます。飲み薬(内服)と塗り薬(外用)があり、炎症を抑える治療も組み合わせて行われます。
- 内服薬:アシクロビル(ゾビラックス®)、バラシクロビル(バルトレックス®)など
- 外用薬:患部に直接塗る抗ウイルス薬
抗ウイルス薬によって病変はいったん治癒しますが、ウイルスを体内から完全に排除することはできません。HSVは治療後も神経節に潜伏し続けます。
再発について
性器ヘルペスの特徴の一つが「再発」です。初感染後、HSVは仙髄神経節に潜伏します。その後、以下のような免疫が低下するタイミングで再活性化し、再発します。
- 疲労・睡眠不足
- 風邪などの感染症
- ストレス
- 紫外線への過度な暴露
- 生理(月経)前後
再発時は初発より症状が軽く、1週間以内に治癒することが多いです。再発を繰り返す方には、抗ウイルス薬を継続的に内服する「再発抑制療法」が効果的です。
妊娠中の注意点(新生児ヘルペスについて)
妊娠中に性器ヘルペスに罹患することは、赤ちゃんにとってリスクになります。出産時にウイルスを排出していた場合、産道を通過する赤ちゃんがHSVに感染し、新生児ヘルペスを発症する危険性があります。新生児ヘルペスは重篤な合併症を引き起こすことがあります。
妊娠中の方へ:
- 妊娠前・妊娠中に性器ヘルペスの既往がある場合は、必ず担当医に伝えてください
- 妊娠中の早期診断と適切な管理が母子感染予防に有効です
- 出産直前に再発している場合は、帝王切開が検討されることがあります
予防方法
現在、日本国内で承認されている性器ヘルペスのワクチンはありません。そのため、以下の予防対策が重要です。
- コンドームの使用:性行為の際に使用することで感染リスクを下げることができますが、完全に防ぐことはできません(コンドームで覆われていない部分からの感染もあります)
- パートナーとの情報共有:お互いの感染状況を把握することも大切です
- 無症状期の感染にも注意:症状がないときでも感染する可能性があることを覚えておきましょう
産婦人科医からのメッセージ
性器ヘルペスは決して珍しい病気ではありません。感染しても適切に治療すれば症状をコントロールできますし、再発を抑える治療法もあります。
「恥ずかしい」「怖い」と受診をためらわないでください。症状に気づいたら、早めに婦人科・産婦人科を受診することをおすすめします。
ご自身の健康を守るために、正しい知識を持つことが一番の予防です。何かお気軽にご相談ください。
参考資料
- 国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト「性器ヘルペスウイルス感染症」
https://id-info.jihs.go.jp/infectious-diseases/genital-herpes/index.html - 国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト「性器ヘルペスウイルス感染症(詳細版)」
https://id-info.jihs.go.jp/infectious-diseases/genital-herpes/detail/index.html - 厚生労働省「性器ヘルペスウイルス感染症」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/genital-herpes.html


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